相手を尊重すること

先日、私がスーパーバイザーをさせて頂いている成人施設の職員研修に講師として参加させていただきました。

講師といっても、私が一方的にしゃべる座学の講義でなく、職員の皆さんが重点的に行った支援の成果発表をしてもらい、それにコメントや助言をさせて頂くスタイルの研修でした。

発表は2件あり、一つは通所部門から、もう一つは入所部門から出されたものでした。

発表内容は両方とも成人自閉症者に対して視覚支援や構造化を行った結果、行動問題が減少した、という比較的オーソドックスで、一見特に目新しさはないような趣旨でした。

しかしながら、その支援の様子の動画を拝見すると、支援者の声かけや動作、利用者様とのやり取りの仕方が非常に素晴らしく、大変感銘を受けました。

特に通所部門から出された発表が素晴らしいものでしたので、簡単にご紹介します(個人情報保護の観点から少し脚色し、抽象的な書き方をします)。

対象の利用者様は、知的障害はさほど重くないのですが自閉症が重く、細かなこだわりがたくさんあり、こだわりがかなわないと激しい自傷行動をするなどの行動問題をお持ちでした。

こだわりはいろいろな種類があり、対応可能なものから対応不可能なものまで様々でした。

これまでは、そのこだわりが利用者様全体の集団の輪を乱すことが多かったため、咎めるような対応をする職員もいましたが、その対応では問題は深刻化する一方であったため、一旦支援のあり方を見直し、個別の重点支援をすることとなりました。

こだわり自体をすぐになくすことはできませんが、こだわりは不安が強まると悪化することが一般的ですので、不安を軽減して差し上げることが、遠回りのようでこだわり対策への近道になります。

そのために、職員の個別対応のもと、視覚的スケジュールを導入することになりました。

そして、その日の日課の流れと、ご本人が気にしていること(利用者と職員の休みがあるかどうか)をホワイトボードに記して、その都度確認してもらうことになりました。

その際の職員の皆様の対応が、上から目線の指示をするような働きかけではなく、とても優しい語調で、「このような日課なんですけど、どうですか?」という感じの確認の働きかけを行っていました。

また確認の結果、拒否をされた場合には、可能な限りそれに応じようとされており、その代わりにどうされたいかをご本人から聞き取って、その通りにしようとされていました。

どうしても応じられない拒否の場合は、それは無理であることを申し訳なさそうに伝え、それに近い代替案を提案してご本人の承諾を請う、というようなことをされていました。

つまり、スケジュールを、支援者が利用者様に言うことを聞かせるために使うのではなく、利用者様のイメージと支援者のイメージを共有するためのコミュニケーションツールとして使われていました。

さらに、そのコミュニケーションをとる際の言葉かけや立ち居振る舞いには、私たち定型発達者同士で重用されるマナーやエチケットがしっかりおさえられていました。

こうした関わりの結果、対象となった利用者様の行動問題は激減し、さらにご本人の要求や拒否がかなえられなかった場合にも渋々ではありますが、そのことを受け入れてくださるようになってきました。

このような取り組みを、管理職の方の旗振りのもと、現場の工夫や努力で実現しておられました。

大変素晴らしいことだと思いました。

「自閉症=視覚優位」だから視覚支援をすれば言うことを聞いてくれるはず、という考えが一方的で傲慢であるということを、改めて気付かせていただいた実践報告でした。

自閉症であろうとなかろうと、知的障害があろうとなかろうと、人と人がやり取りを持つ際には、マナーやエチケットをおさえて、相手を尊重しながらコミュニケートすることが重要であり、視覚的スケジュールもそれを実現するためのツールであって、相手を支配するためのツールではないということに改めて気付かせていただきました。

私自身も常にこのことを忘れないようにし、関わりを持たせていただいている子ども達、ご家族の皆様、関係機関の皆様等、関わりのある全ての方々に対して、マナーを持って相手方のお立場やご意向を尊重させていただきながらコミュニケートする努力をしていこうと改めて肝に銘じました。

職員研修資料
(僭越ながらこの実践報告にコメントを述べさせていただきました)