手指の巧緻性と計算能力の関係性

私は日本発達心理学会の会員なのですが、日本発達心理学会は機関紙の他にニューズレターが定期的に送られてきます。

このニューズレターには、研究者や専門家の先生方のちょっとした記事が載っているのですが、これが興味深い内容のものが多く、私は自分の興味と合う記事を時々読んでいます。

今回送られてきたニューズレターの中で、金沢大学の浅川淳司先生という方がお書きになった記事が大変興味深かったので、ちょっとご紹介したいと思います。

「手指の巧緻性と計算能力に関係はあるのか?」という記事になります。

え?手指の巧緻性と計算能力??

手指の巧緻性(器用さ)が脳の発達に影響を与えることは一般に知られていますが、取り立てて計算能力との関係性があるか、ということについて、私は不勉強のためか知らなかったので、興味を持ってこの記事を読んでみました。

著者の先生はこの関係性について12年にわたり研究をなさってきたそうで、ご自身の研究と他の研究者の研究を引用しながら、わかりやすく解説してくださっています。

結論から述べると、手指の巧緻性と計算能力に関係はあるのだそうです。

しかも驚いたことに、ワーキングメモリと計算能力の相関関係よりも高いことが示唆されたそうです。

ワーキングメモリは、情報を一旦頭の中に留め置いて、それを頭の中で操作する力であり、まさに暗算などに必要な能力そのものとも言えるものです。

それよりも手指の巧緻性のほうが計算能力との関連性が強い、というのは正直驚きの結果です。

この結果の理由は諸説あるそうで、たとえば、「手指と数の表象の神経基盤が共有されている、もしくは近接していることが明らかにされて」いるそうで、わかりやすくいえば両能力を司る脳の部位が近かったり重なっていたりするということのようです。

他にも考えられる理由はいくつかあるそうですが、いずれにしても驚きの結果でした。

弊社の療育でも手先を使う課題を設定することが多くありますが、こちらの意図としてはダイレクトに手先の器用さを底上げするために行っていることがほとんどでしたが、まさかそれが間接的に計算能力の底上げにもつながっているとは思いませんでした。

また療育だけでなく、園や学校でのさまざまな微細運動にかかわる活動も計算能力アップに寄与しているかも知れず、もっと言えばもしかするとご家庭でゲームに没頭している子も手先を使っているわけですから、結果的に計算能力の研鑽につながっているかもしれません。

お子さんがゲームばかりしていてつい怒ってしまいお子さんと大きなトラブルになる、という親御様も、(もちろん時間等のルールを設定することは大切ですが)「これは計算能力を鍛えているんだ」と思っていただけば、反射的に怒鳴らずにすむかもしれませんね。
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